一つの方向を目指して協力し合える組織をつくるための3ステップ
はじめに
経営トップの皆さんは常に自分の会社を良くしていきたいと思っていることと思います。
事業をうまく展開し、業績を上げ、できれば社員にもできるだけ多く還元してあげたい。
そんな風に思っているのに、社員の皆さんはなかなかその想いに応えてくれない。
こんなに会社が厳しい状態にさらされているのに、自分で考えて、動こうとしない。
なんか歯がゆいですよね。
でももし今まで、事業や業績、人の採用などには意識を向けていたとしても、「組織そのものをつくること」に意識を向けてこなかったとしたら、そうした社員の皆さんの状況はある意味当然の結果かもしれません。
お金で雇った人たちにそれぞれの役割を与えたとしても、もしその人たちがバラバラで、組織(チーム)になっていないとしたら、事業を思うように展開することはできませんし、事業を思いどおりに展開できなければ、当然業績も思わしくなく、社員の皆さんに還元することもできません。
つまり、事業が順調に回り、業績が持続的に高まっていくような状態を生み出すためには、本当に強い組織をつくろうとする不断の、丁寧な取り組みが必要になってきます。
本当に強い組織とは「世の中の人々が本当に求めている独自性の高い価値を提供し続けられる組織」だと思います。
このように本物の価値を提供し続けられる組織であれば、どんな厳しい状況に直面してもたくましく前進していくことができます。
では本当に強い組織をつくるためには、どのような取り組みが必要なのでしょうか?
決して難しいことではありませんが、下記の3つのステップを丁寧に踏んでいく必要があります。
1.目指す方向を一致させる
2.メンバーを最大限に活かすマネジメントを実現する
2.関係の質(チームワーク)を高める
単純に言えば、「一つの方向を目指して、一人ひとりが最大限の力を発揮しながら、協力し合える組織」です。
今回は、この一つの方向を目指して協力し合える本当に強い組織をつくるための3ステップについてお伝えしていきたいと思います。
ステップ1:目指す方向を一致させる
本当に強い組織をつくるためにまず重要なのは、目指す方向を一致させるということです。
では、目指す方向が一致しているというのはどういう状態のことをいうのでしょうか?
会社全体、部門、チーム、メンバーそれぞれの役割で目的を持っていること。
そして、日々生じる仕事の本来の目的や本質的な目的は何かを意識し、それらの目的が一つの方向に向かっている状態です。
いわゆる、全員が仕事をする上でのベクトルが合っていることを言います。
では全員のベクトルを合わせていくにはどうしたら良いのでしょうか?
要するに、会社の大きな目的から社員の皆さんの日々の仕事の目的までがちゃんとつながっているように、上から順番に上位の目的を達成することを考えながらそれぞれの目的を丁寧に設定していけばいいのです。
目的は、仕事をする理由・意味ですし、モチベーションの素になります。
会社全体の大きな事業も、目の前の小さな仕事もそれぞれスケールの違う目的が同じ方向を向いていて、連携しているということが大事です。
大きな目的から順番に下に落としていくイメージですね。
会社の一番大きな、そして最も大切な目的は存在理由(ミッション)です。
そして、存在理由(ミッション)を中長期でもう少し具体化した目的が、ありたい姿(ビジョン)です。
そして、その中長期の目的である「ありたい姿(ビジョン)」を実現するためには、そこに至るまでの階段をつくらないといけないので、適切な目標の設定が必要です。
目標の設定については、最近はOKRという目標管理の仕組みが注目されています。
目標と言っても、目的と通常3つの結果指標で構成されていて、全社、部門、チーム、メンバーというように順番に設定し、ここでも目的がつながっていて、一つの方向に向かっています。
これを簡潔に示すと、下記のようになります。
存在理由(ミッション):到達するということがなく、永遠に追求したい「だれのために、何をしたいのか」という想い
↓
ありたい姿(ビジョン):存在理由(ミッション)を軸に、中長期に実現したい状態や組織のありたい姿
↓
目標:ありたい姿(ビジョン)を実現するための数カ月から1年程度の目的と結果指標
しっかりと存在理由(ミッション)を掲げ、大きなところから小さなところへ目的を繋ぎ、目指す方向を一致させることがとても重要です。
こうした組織をつくることができれば、存在理由(ミッション)に基づいた、世の中の人々が本当に求める独自性の高い価値(商品やサービス)を自ずと提供できるようになり、どんな状況でも自力で前に進むことができる本当に強い組織になります。
このような目的志向の組織になるだけでも、組織の質はぐっと上がりますが、さらに組織の質を上げるためには、メンバーを最大限に活かすマネジメントや環境を実現する必要があります。
ステップ2:メンバーを最大限に活かすマネジメントを実現する
目標を丁寧に設定できたとしても、最終的にその目標達成のために行動し、価値を生み出し、業績をつくるのは、一人ひとりのメンバーです。
どんなに力のある経営トップでも、自分一人で目的を達成したり、業績を上げたりすることはできません。
ですから、メンバー一人ひとりが、迷わず、気持ちよく、最大限の力を発揮できるマネジメントや環境を実現する必要があります。
そのためにマネジャー以上の方が心がけることが3つあります。
適切な情報を共有する
メンバーの皆さんが迷わずに自ら考え、行動し、最大限の力を発揮するためには、適切な情報を与えてあげる必要があります。
売上や利益、コストの状況、商品の開発動向や生産・在庫状況、会社の中の大きな動きや他のメンバーの状況など、メンバーが自分の行動を決めるために必要な情報は極力全員で共有します。
もしダイエットをしているときに、日々の体重や体脂肪率のデータなどがわからないとしたら、スリムな体になるという目標に対して、どう具体的に行動して良いのか適切な判断できず、ダイエットが失敗に終わる可能性が高いのと同じです。
目標に対して、メンバーが迷わずに日々適切な判断と行動を自律的に行えるようになるためには、必要な情報を提供してあげることが必須です。
経営情報は社員には開示する必要はないと考えている経営者の方もいらっしゃいますが、そうだとすると、社員が主体的に考えて、行動することを求めることは非常に難しくなります。
メンバーの意見やアイデアを傾聴し、その実現を支援する
メンバーに最大限の力を発揮してもらうためには、メンバーの考えや発想をできるだけ引き出す必要があります。
そのためには、メンバーが意見を言ったり、アイデアなどの提案があったときは、とにかく関心を持って耳を傾けることです。
メンバーからの意見やアイデアの提案に対して、マネジャーや経営者は、とかくその意見やアイデアの不十分なところに目が行ってしまって、否定したり、ケチをつけたりしてしまいます。
これは最悪の対応です。
意見やアイデアに対して否定したり、ケチをつけるということは、意見を言ったり、アイデアを提案したメンバー自身を否定したり、ケチをつけたりすることとほぼ同じで、そのメンバーもそう感じるはずです。
特に理由も示されず意見やアイデアを否定されたメンバーは、二度と積極的に意見を言ったり、アイデアを提案したりすることは無くなるでしょう。
メンバーから意見やアイデアの提案があったときは、注意深く、関心を持ってその内容に耳を傾け、意見や提案してくれたことに感謝し、その意見やアイデアが活きるように、不十分なところを再度詰めるように指示をしたり、一緒に実現する方法を考えてあげることが重要です。
メンバーの意見や提案は組織が発展したり、良い方向に変わっていくための種です。
マネジャーや経営者が不十分なことを教えてくれているのです。
これを活かさない手はありません。
目的とゴールを共有したら、やり方は任せる(権限委譲)
メンバーが迷わず、最大限の力を発揮してもらうために重要な3つ目のことは、日々の仕事やプロジェクトの目的とゴール(達成状況)をしっかり共有できたら、その実現方法はメンバー自身に任せるということです。
実現方法ややり方を事細かに指示するマネジャーがいますが、それはメンバーの主体的な力の発揮を阻んでしまいます。
目的やゴール(達成状況)を含めてすべてを任せる丸投げもNGですし、事細かに指示するマイクロマネジメントもNGです。
目的とゴール(達成状況)を話し合いでしっかり合意し、後の進め方はメンバーの主体性に任せるというのが正解で、マネジャーも安心して見ていられると思いますし、メンバーも自分の能力を活かせる場があるので、マネジャーにとってもメンバーにとってもハッピーで、チームと個人のパフォーマンスを高めるマネジメントです。
それでは次に、組織のパフォーマンスを最も高める、メンバー同士の関係の質の高め方について、お伝えします。
ステップ3:メンバー同士の関係の質を高める
メンバー同士の関係の質が、組織の生産性や創造性を高めることにもっとも影響を与えます。
にもかかわらず、メンバー同士の関係性がほとんどない組織(バラバラ、仲が悪いなど)やメンバー同士の関係の質を高めることに意識を向けていない企業が非常に多いのが実状です。
メンバーとは、経営者、上司、一般社員などすべてを含みます。
特に中小企業はこのメンバー同士の関係性が非常に弱いケースが多いのですが、県大会で優勝するという目的を掲げていながら、一人ひとりの能力を上げることは意識しても、チームワークにはほとんど意識を向けていないサッカーチームのようなものです。
どんなにメンバーの能力が高いとしても、チームワークが磨かれていないチームは、高い成績を残すことはできないでしょう。
優秀な選手がそろっているのに、パスがつながらないサッカーチームや一人ひとりは優れた技術を持っているのに、調和した音色を響かせることができないオーケストラのようなものです。
組織の生産性を高めるためには、メンバー一人ひとりの優秀さや成長度合いも重要ですが、それよりもメンバー同士の関係(コミュニケーション、チームワーム)の質が高まる方がインパクトはずっと大きいのです。
それでは、どうしたらメンバー同士の関係の質を高めていくことができるのでしょうか?
ポイントは4つです。
①同じ船に乗り、運命を共にする存在=仲間であることを理解する → 存在承認、情報共有
②様々な価値観・個性があることを理解し、尊重する → 理解・尊重
③お互いの強みを活かし合い、弱みを補い合う → 相互支援
④意識して共通体験を重ねる → 共通体験
この関係の質を上げていく4つのポイントについて、一つずつ見ていきましょう。
同じ船に乗り、運命を共にする存在=仲間であることを理解する → 存在承認、情報共有
1つの企業や組織に加わるということは、好むと好まざるにかかわらず、メンバー全員がその企業や組織と運命を共にしなければなりませんし、メンバー一人ひとりの思考や行動が所属している企業や組織の運命に影響を与えていきます。
お互いが好きかどうかは関係なく、ある意味一体なのです。それは家族も同じですよね。
一緒にいる間は運命を共にする仲間であり、お互いに大切な存在であることをしっかりと認識することが大事だと思います。
企業や組織全体を機械のように考えて、メンバーをとかく一部の取り換えのきく部品のように軽く見てしまうケースがありますが、お互いの存在を、運命を共にするかけがえのない仲間であることをまず認め合うということが、関係の質を高める上でのベースになります。
それでは、お互いに仲間だという認識を強めていくにはどうしたら良いかというと、単純ですが、お互いにしっかりとあいさつや声掛けなどを日常的にし合うということです。
組織づくりで最初にやることがよくあいさつの徹底だったりしますが、基本中の基本なのですね。
また、重要な情報を共有することも、大切なパートナーだと見ていることになり、その存在を認めることにつながります。
様々な価値観・個性があることを理解し、尊重する → 理解・尊重
組織には様々な価値観や個性を持ったメンバーがいます。
その多様性が創造性を生むと言われていますが、関係の質を上げるためには、やはりまず自分とは違った価値観や個性があるんだということを理解し、尊重する必要があります。
人はだんだんと経験を重ねていくと自分の価値観や固定観念が絶対に正しく、普遍的だと勘違いするようになります。
自分の価値観や固定観念は自分にとっては正しいとしても、他の人にとっては必ずしも正解ではありません。
仕事をするにあたっても、とにかくスピード早く対応することに価値をおいている人もいますし、スピードよりも正確さに価値をおいている人もいます。どちらも状況によっては正解であり、不正解の場合もあります。
成功を重ねてきた人や上司は、これが正しいという価値観や固定観念を持っていることが多く、メンバーの価値観や個性を認めずに、自分の価値観や固定観念でものごとを決めてしまうことが往々にしてありますが、これは関係の質を毀損する最たるものです。
ですから、絶対に正しい価値観や固定観念は無く、様々な価値観や個性が存在していると認め、それを尊重しながら、今は何が最適なのかを0ベースで検討する姿勢が、関係の質を高める上でとても重要です。
お互いの強みを活かし合い、弱みを補い合う → 相互支援
組織は、一人では達成できない目的(理想)を実現するために人が集まった集団ですから、お互いに助け合い、支え合うことが必要です。
たとえば世界平和を実現したいと高い理想を掲げても、協力してくれる多くの人がいなければ絶対に達成することができません。
経営トップがどんなに優秀でも、一人では大きな目標を達成することはできません。
ですから、何か価値あることを実現しようと思ったら、そこにいるメンバーの強みを活かし、弱みを補うという、相互支援が不可欠になります。
たとえば、エベレストに登頂しようと思った時に、隊員一人ひとりのレベルがとても高いとしても、それぞれ強みと弱みを持っているはずです。
そんな中で自分のパフォーマンスだけを考えて行動していたら、エベレスト登頂という難易度の高い目標を達成する可能性は下がってしまうでしょう。
やはり常にお互いに思いやりながら、お互いの強みを最大限に活かし、弱みを補い合い、支え合うことが、関係の質を高め、組織のパフォーマンスを上げる上でとても重要になってきます。
意識して共通体験を重ねる → 共通体験
関係の質を高める上での4つ目のポイントは、共通の体験を重ねることです。
組織における共通体験の最も重要なものは、共通の目的に向かって、コミュニケーションを取りながら、その実現を目指して一緒に行動し、一緒に振り返り、結果を生み出すことです。
共通の目的の実現を目指して、コミュニケーションを取りながら協力し合って何かを一緒に達成できれば、人間は充実し、楽しくなれるのでそれだけで十分とも言えますが、他にも共通体験を意識的に重ねることも大事です。
コロナ禍で今は難しいですが、委員会やクラブ活動、飲み会やパーティーをしたり、一緒に旅行をしたり、運動会などのイベントをやるなども共通体験を重ねることになり、関係の質を高めます。
工夫して、できると良いと思います。
まとめ
本質的に強い組織をつくるためには、1.目指す方向を一致させる、2.メンバーを最大限に活かすマネジメントを実現する、3.関係の質(チームワーク)を高めるという取り組みを丁寧に行っていく必要があります。
この3つのことがある程度実現できるようになれば、メンバーの皆さんは会社の目指す方向が分かり、自分の目の前の仕事が最終的にどこにつながっているかがわかるようになるので、仕事をする意味や意義を感じることができます。
また、会社が自分を最大限に活かすマネジメントをしてくれれば、やりがいと充実感を感じることができます。
そして、関係の質が高まれば、安心と楽しさを感じることができます。
仕事の意味や意義、やりがいと充実感、安心と楽しさが感じられる組織で働くことができたら、本当に幸せですし、そのような組織のパフォーマンスが高まらないわけはありません。
本当に強い組織をつくろうと思っても、現状ではあまりにも関係の質が悪い組織の場合は、目指す方向を一致させるところから始めてもうまく取り組みが進まない場合があります。
そういう場合は、まずは関係の質を高める取り組みをして、メンバー間の関係性がある程度できてから、1.目指す方向を一致させる、2.メンバーを最大限に活かすマネジメントを実現することを順番に取り組んでいくと良いと思います。
本質的に強い組織をつくることは、芸術作品をつくるような地道な作業ですが、関係の質が最終的に高まり、生産性と創造性の花が咲くことを楽しみに、ぜひ丁寧に取り組んでいただければと思います。
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