OKR(目標管理制度)で幹部に変革への一体感と熱意を生み出す ~株式会社ホームメイド東京支援事例~

目次
はじめに:人材が定着し、社員数が順調に増えていく組織基盤を整備したい
株式会社ホームメイド東京は、中野区を拠点とする主に工事現場などでの通行人や車両の交通誘導を行う警備会社です。
ホームメイド東京の横須賀社長に初めてお会いしたのは2023年の7月ですから、当社とのお付き合いはもうすぐ2年になります。
横須賀社長にお会いした時はホームメイド東京が6期目を迎え、横須賀社長が必要性を感じてちょうどホームメイド東京の企業理念(ミッション・ビジョン・バリュー)を言語化され、10年後の2033年には当時の社員数50名を1000名体制に持っていきたいという大きなビジョンを掲げられた時期でした。
ですから、その時の重要課題は、「採用した人材が定着し、社員数が順調に増えていく組織基盤を整備していきたい」というものでした。
警備業は、比較的単純に見える業務ですが、安全を第一とする仕事ですから、忍耐と正確性、そしてホスピタリティが必要な仕事で、なかなか長続きする社員の方が少なく、常に採用活動をしていましたが、採用した分退職するという状況で、全体の社員数が増えていかないというのが悩みでした。
横須賀社長に2回当時のホームメイド東京の状況と課題、そして横須賀社長のビジョンや価値観などをじっくりと聞かせていただき、3回目に当社の支援の基本方針と進め方について提案をさせていただきました。
ホームメイド東京は、東京と東北の二支店で警備事業を展開していて、まず東京支店から組織基盤整備を行っていこうということになりました。
当時東京支店は15名ほどの社員数でしたが、現在は60名強と約4倍の人数になっています。
まだ道半ばですが、この人員増を実現した組織基盤整備の基本方針、具体的な取り組み、今後の課題など、現在までの軌跡についてお伝えしたいと思います。
基本方針は、幹部の一体感を高め、社内に勢いと規律を生み出すこと

左から平岡さん、河原田さん、相原支店長
当時のホームメイド東京の課題は、「採用した人材が定着し、社員数が順調に増えていく組織基盤を整備していきたい」というものでした。
横須賀社長の願いとして、「社員には経営者感覚で、どうだという感じで誇りをもって働いてほしい、そして活き活きと働いてほしい」という強い願いがありました。
そこで、当社が支援するにあたっては、次の目的とゴールを設定しました。
【目的】
ホームメイド東京が、質においても、規模においても着実に成長し、発展していくための一貫性のある経営基盤を整備する
【ゴール】
- 社員が働く意味と誇りを実感できるようになる
- 同業他社よりもワンランク上の質の高いサービスを提供できるようになる
- 業界トップレベルの働く安心感と処遇を実現し、必要な人材を確保できるようになる
- 社員の自発的な成長を促す教育体制を整備する
要するに、「業界トップレベルの安心感と処遇で働くことができ、ワンランク上のサービスを提供することに誇りを持つことができる、社員のエンゲージメントが高いいい会社になる」という方針です。
採用力を強化しながら、本質的にいい会社になるための組織基盤を整備することによって、結果として人材が集まり、定着し、増えていく会社を目指したわけです。
合言葉は、「日本で一番働きやすく、仕事に誇りを持てる警備会社をつくりましょう!」でした。
ほんとうにそんな会社にならないと、1000人体制などとても実現できないでしょう。
そのためにはまず、組織基盤づくりの中心となる横須賀社長をはじめとするリーダーが一体となって、組織基盤を整備していくことに情熱を傾けていく態勢を整えていく必要がありました。
そこで、リーダーが一体となって組織基盤整備を推進していく会議体が必要と考え、まず企業理念(ミッション・ビジョン・バリュー)に基づく3年後の会社のありたい理想の姿(2026年ビジョン)を明確にし、その2026年ビジョンを実現するための年度単位の目標(OKR)を設定することにしました。
そして、そのOKRの達成にむけての現状、重要課題、次回までのアクションを確認しながら事業を推進していく2週間に1回の「リーダー会議」を実施していくことになりました。
3年後ビジョンを明確にし、OKRでそのビジョンを実現する
横須賀社長と相原東京支店長のトップ2人とまず、2026年9月を見据えた3年後ビジョンとそれを実現するための2023年度東京支店のOKRを設定することにしました。
そして、言語化したのが下記の2026年ビジョンです。
【2026年ビジョン】
1.定性ビジョン
200人の社会貢献、安全・安心・笑顔を守る
2.定量ビジョン
①クライアント・地域住民・仲間に感謝される気配り・誘導・対応ができるようになる
②2級検定資格者50%以上のプロ集団
●警備業務全般の知識・判断・実行、自分も他人も守れる安全第一、チームワーク
③実現したい成果
●200人の信頼できる仲間をつくる
●2026年には、3か月以上働いた者で、会社に不満を持って辞める者、音信不通で辞める者ゼロ
●2支店開設
3年後ビジョンである2026年ビジョンは、定性的な理想を追求するビジョンとどんな状態を実現したいのかを明確にした定量ビジョンで構成され、世の中にどんな価値を提供できるどんな会社になりたいのかを表現しています。
2033年に1000名体制で事業を展開するためには、3年後には200名の信頼できる仲間をつくり、「安全・安心・笑顔を守る(これはホームメイド東京の企業理念を貫くメインコンセプト)」という社会貢献ができる会社になるという想いが込められています。
そして、この2026年ビジョンを実現するための2023年度東京支店OKRは、次のような内容です。
【2023年度東京支店OKR】
1.目的(O)
安全・安心・笑顔を守るため、60名の信頼し合える仲間をつくる
2.重要な結果指標(KR)
①定着
●教育(スキル、マナー、コミュニケーションなど)ができるリーダーを4名育成
●社長がメンバーを3か月に1回面談することによって、承認と風通しの良い組織風土の実現
●勤続期間、資格取得、役割に応じてアップする、同業他社よりも手厚い給与制度
②採用
●継続的に人材を紹介してくれるルートの構築
③サービスの向上
●2級検定資格+6名合格
2026年ビジョンと2023年度東京支店OKRを横須賀社長と相原支店長と策定し、これを東京支店運営の基本方針として、管制と教育のリーダーと警備業務の現場での指導を担うリーダーの2名を巻き込んで、東京支店の変革に向けての2週間に1回の「リーダー会議」を実施していくことにしました。
このリーダー会議では、主に下記のことを行いました。
- 企業理念(ミッション、ビジョン、バリュー)の理解促進
- 2026年ビジョンの内容の再確認
- 2023年度東京支店OKRのレビュー(PDCAサイクルを回す)
- 前回決めたアクションプランの確認
- 決めたアクションプランについて、できたことや成果、できなかったこととその原因の確認
- 全体を俯瞰した上で、現在の最重要課題の特定
- 次回までに実行するアクションプラン
- OKR以外で決めるべきことの検討
2023年度東京支店OKRの最重要課題は社員の定着で、そのためには採用時の新入社員研修と現場での実地教育の充実が最大のテーマでした。
そして、社員を安定的に採用する体制づくりと社員に資格取得を促すことによる警備サービスの質向上も重要でした。
OKRのよいところは、理想の実現を中心においた目的(O)に基づいて、何に注力すべきなのかが明確になるところです。
2023年度東京支店OKRについては、達成できたこともありますが、もちろん達成できないこともありました。
達成できたこととしては、採用した人材に対する新入社員研修の内容を充実することができたこと、仕事ぶりに基づいて昇給できる新賃金制度の実施、その昇給者を対象とした横須賀社長による3か月ごとの面談、2級検定資格取得の促進、隊長制度の導入などが実現でき、社員の皆さんは「会社が変わってきている」と実感しているようです。
ただ、目標としたリーダーのあと2名の養成はできませんでしたし、安定的に人材を採用できる体制の構築はいまだ実現していない状態です。
この2023年度東京支店OKRの達成状況を踏まえて、2024年10月を始期として現在運用している2024年度東京支店OKRの内容は下記のとおりです。
【2024年度東京支店OKR】
1.目的(O)
安心できる、成長できる、稼げる会社
2.重要な結果指標(KR)
①目指すサービス品質を明確にし、全員ができるように教育体制を整える
②6か月に2名のペースで隊長を養成し、現場のサービスレベルを上げる
③気持ちよく働ける職場の人間関係をつくる
④将来に向けたキャリアビジョンを描ける制度や仕組みを整える
⑤毎月の稼働人数を130人ずつ増やし、2025年9月の稼働人数を1800人とする
やはり1年目のOKRの運用を踏まえて考えられているので、2024年度東京支店OKRの内容は、かなりレベルが上がっているのではないかと思います。
目的(O)については、警備業務を行う社員の皆さんが本当に求めていることは何か、そもそものところから発想し、安心して働くことができ、仕事をとおして成長と誇りを実感でき、ちゃんと働けば稼げる状態を望んでいるはずという認識に基づいて設定されました。
そして、現在は成長を実感し誇りを持って働けるように、KR①の目指すサービス品質を明確にし、それをスキルマップに落とし込む検討を続けています。
企業理念を軸とした一貫性のある組織基盤づくりを行う
会社を持続的に大きく成長・発展させるため会社を変えたいと思ったときのポイントは、企業理念(ミッション・ビジョン・バリュー)を軸とした一貫性のある組織基盤づくりを行うことだと思います。
とかく会社を変革したいと思ったときに、状況対応的に人事制度を整備すればいい、教育をもっと充実すればいいのではないか、福利厚生を充実すればいいのではないかと単体で施策を実施しがちですが、教育制度整えただけという単体の施策だけでは会社が変わるということはほとんど起こりません。
社員のエンゲージメントを高め、会社を成長軌道に乗るように変革するためには、下記の組織基盤の整備のいくつかを組み合わせて、計画的にまたは関係性を考えながら同時並行的に取り組んでいく必要になります。
- 社員が仕事にやりがいや誇りを実感できるようになるための中期ビジョンや経営戦略の明確化
- 中期ビジョンや経営戦略を実現するためのOKRの導入と一体的な運用
- 社員がチャレンジできるようになるための信頼感や心理的安全性の高い組織文化づくり
- 社員のチームや会社への貢献を適切に評価し、社員の成長と適切な処遇を実現する人事制度の構築と運用
- リーダーがメンバーの自律的な働き方を後押し、メンバーの成長と成功をさらに促すマネジメント力の強化
- 社員の貢献により生み出された利益を報酬水準や福利厚生で還元
ホームメイド東京の東京支店は、今1と2に取り組み、新人への教育の充実、隊長の養成、ワンランク上の質の高いサービス基準の明確化と徹底に取り組んでいるところですが、次は3の信頼し合い、安心して働ける組織文化づくり、キャリアビジョンが描ける人事制度づくりなどに取り組んでいく予定です。
もちろん、現実には想定していなかったいろいろな問題が常に発生していますが、そのたびに企業理念や2026年ビジョン、今年度のOKRに立ち戻り、軸をブラさずに問題解決にもあたりながら、リーダーの皆さんはモチベーション高く、やるべきことに取り組んでいます。
当社の支援の効果
今回改めて、横須賀社長に現在までの当社の支援によると思われる効果をあげていただきました。
【横須賀社長が実感している効果】
- 幹部社員と、会社のミッション・ビジョン・バリュー、経営方針、目標を共有できるようになった。
- 幹部社員と日ごろの仕事に対する方針や取り組みなどの目線合わせができるようになった。
- 上からの押し付けではなく、現場や持ち場の状況や情報に基づく提案を受けて、業務改善が進むようになった。
- 上記と連動してですが、幹部社員が以前よりも自発的に自分で考えて動けるようになった。
- OKRを導入することによって、事業推進においてPDCAサイクルが回るようになった。
- 新入社員の教育、朝礼・終礼のやり方、社長と隊員の定期面談、法定書類の整備、資格試験受験費用の取り扱い、隊長制度など、今まで曖昧であったり、そもそも規定がなく問題が生じていた部分を規定化し、改善を図ることができた。
横須賀社長と幹部社員が一丸となって、事業推進や業務遂行ができる体制ができてきたと感じていらっしゃるようです。
まとめ
大きなビジョンを掲げ、会社を大きく変革していいきたいときには、社員の、特に幹部社員の一体感と組織基盤づくりをPDCAサイクルを回しながら地道に進めていく熱意が必要になってきます。
この幹部の一体感と熱意を生み出すためにもっとも必要なのは、企業理念にもとづく数年先を見据えたワクワクするようなビジョンとその実現を担保するOKR(目標管理制度)の導入と運用ではないかと思います。
仕事に対する熱意とは、エンゲージメントと言い換えてもよいと思いますが、エンゲージメントを高めるためには①目的意識(やりがいと誇り)、②自律的な働き方(自己効力感と成長)、③充実した職場環境(安心と快適)、④信頼・心理的安全性(よい仲間)が必要だと考えていますが、ホームメイド東京東京支店では今①の目的意識(やりがいと誇り)と幹部の一体感を高めることに取り組んでいることろですが、→④→②→③の順番で取り組んでいければと思います。
こうしたホームメイド東京独自で、一貫性のある組織基盤整備を続けていけば、日本一魅力的な交通警備会社なる可能性は十分にあると思います。
期待していただければと思います。
当社では、それぞれの企業の人材や組織に関わる課題解決の方向性を整理する個別相談を行っています。
こんな課題があるんだけど、何から手をつけたらよいかわからないというような場合は、一緒に課題を整理して最重要課題を見つけ、どのような解決策をどんな順番で取り組んだらよいかを見出すサービスです。
お気軽にお問い合わせください。
↓