理念経営がやはり組織に好循環を生む
「想い」が世の中を突き動かしている
「想い」が世の中を突き動かしているとつくづく思います。
世の中を突き動かしているのは、論理やアイデアや技術やノウハウであって、「想い」ではないという意見も当然あると思います。
確かに世の中をリードし、変えていくのは最終的には論理や技術なのかもしれませんが、その論理や技術の前に「想い」があると思います。
2019年のラグビーワールドカップの日本代表の戦いぶりを覚えていらっしゃる方もいると思いますが、とんでもないトレーニングと技術、チームワークでラグビーの伝統国とは少し次元の違うスタイルで予選を全勝し、決勝に進みました。
その試合を見ていると美しいとも思えました。
彼らの躍進を支えたのは先ほど言ったように、ハードワークであり、身につけた高度な技術であり、緊密なコミュニケーションだと思うのですが、それを獲得するための死んだ方がマシと思えるような厳しいトレーニングを続けられたのは、彼らに強い「想い」があったからだと思います。
「自分たちがベスト8になれることを証明したい」「日本のラグビーファンに感動を与えたい」「ラグビーを始める子供たちを増やしたい」などの強い「想い」が必ずあったはずです。
ちなみにチームのスローガンは、「憧れの存在になる」だったそうです。
ビジネスに目を転じてみると、弊社は常に10社ほどの中小・ベンチャー企業の組織活性化や組織力強化など、企業が進化するためのお手伝いをさせていただいていますが、明らかに「理念経営」をしている企業がうまくいっています。
「自分の会社は世の中に対してこんな会社でありたい」「世の中にこんな価値を提供したい」という「想い(企業理念)」を明確にし、それを軸にして経営に一貫性を持たせている企業は、社員が元気で、組織内に好循環がうまれ、当然業績も順調です。
もちろん完ぺきな会社はありませんが、「想い(企業理念)」を大事にし、その実現を追及している会社はプラスの相乗効果が生まれているのです。
そうでは無い会社は、社員がバラバラで、不満や文句が多く、社内に明るさやエネルギーが無く、当然生産性が低く、ワークライフバランスが実現していないケースが多く、人材が集まらなかったり、辞めていく社員が多く、業績もいまいちまたは下降しているという悪循環・低業績の状態になっています。
やはり人はお金を生み出すことだけではなく、価値あること、意味あることをやりたいやりたい、人に喜んでもらえることをしたいのです。
特に若い人たちは、お金や物質的なことではなく、人や世の中にとって価値あることをしたい、どうせ働くならそうした「想い」を本当に追求している組織で働きたいという人たちが増えています。
今後「想い」が世の中を突き動かしていく流れは、さらに強まっていくと思われます。
当社の想い(ビジョン)
「働くすべての人が活き活きと輝く世界」というのが、私たち㈱シンフォニック・バリューズの「想い(ビジョン)」です。
㈱シンフォニック・バリューズはいわゆる組織・人事コンサルティングの会社で、企業の組織活性化や組織力強化など組織の本質的な発展を中心にお手伝いをさせていただいています。
2017年4月にシンフォニック・バリューズを設立しましたが、その前にあるメーカーで人事を担当していました。
その会社で18年、人と組織を見つめてきましたが、その会社はそんなつもりはなかったのかもしれませんが、結果的に全社で、「やる、やらせる」「指示・命令」が主体のマネジメントの会社でした。
社員は基本的に経営を実行するためのものであって、自分の存在が尊重されていると感じている社員はほとんどいなかったのではないかと思います。
いつ自分が会社や上司から傷つけれられるかもしれないという不安感から、表面上とは裏腹に、社員は委縮して、リスクのあることには踏み出せず、自分を押し殺して、会社や上司の言うことに従っていくという状態だったと思います。
そうした組織風土だと、せっかく苦労して採用した新卒社員が短い期間でやめていくことになります。それも意識も高く優秀だと思う新卒社員からやめていくという状態でした。
やはり人事の仕事をしていて新卒社員に辞められるのが、一番がっかりしましたし、辛かったと言えます。
人事の担当者なら誰しも、社員の皆さんに「自分らしく、活き活きと働いてもらいたい」と願っていると思いますが、そうではない状態が生まれていました。
そんな状態を変えたいと思い、社員が自律的に考え、行動する研修を導入したり、社員の意見が経営に反映するような制度を導入したりなどしましたが、本人をいくら良い状態に変えたとしても、やはり会社や組織の状態が変わらなければ人が辞めていく流れは変わりません。
そこでマネジャークラスに対してメンバーを尊重し、力を引き出すマネジメントを学んでもらう研修なども実施しましたが、マネジャークラスも組織風土の影響を受けていて、自分の行動様式を変えることはできませんでした。
残念ながら、私の圧倒的な力不足もあり、会社の組織風土を変えることはできませんでしたし、特に会社の中から会社を変えていくことの難しさを思い知らされました。
そこで社員を最大限に活かし、良い会社をつくりたいという想いを持つ主に中小・ベンチャー企業のトップと一緒に、「社員の皆さんが自分らしく、活き活きと働ける好循環の組織をつくりたい」と思い、㈱シンフォニック・バリューズを立ち上げました。
どうしたら「社員が自分らしく、活き活きと働ける好循環の組織」を実現できるか?
それでは、どうしたら「社員が自分らしく、活き活きと働ける好循環の組織」を実現できるでしょうか?
2つの面からのアプローチが必要です。個人と組織の両方から変わっていく必要がありるのです。
まずすべての人が、自律的に考え、行動できるようになり、そしてお互いを尊重し、活かし合うことができるようになる必要があります。
なんか宗教の教義のようになってきましたが、こんな状態が実現できればいいなと本当に思っています。
仏教の教義を一言でいうと、「思いやり」だそうです。
ゲーテが、すべての人が自分の玄関の前を掃除すれば、世界は一変にきれいになると言ったそうですが、すべての人が思いやりを持てば、世界は一瞬にして今とは違ったものになるでしょう。
話を戻すと、人が自律的に考え、行動できるようになれば、極端に言えばどんな環境であっても、今よりも活き活きと働ける可能性が高まるはずです。
では、人はどうしたら、自律的に考え、行動できるようになるのでしょうか?
1つには、自分の心の動きを含めた日々の現実を見つめ、しっかりと認識することです。
そしてもう1つは、本当に大切にしたい自分自身の生き方や在り方(これを「人生理念」と呼んでいます)を明確にし、それをいつも意識するということです。
ただこれだけです。単純に言えば、自分の現実と理想をしっかりと認識する、意識するということです。
この2つをしっかりできれば、自ずとどうしたら良いかがわかり、適切な行動をして自分の理想に近づいていくことができます。
ダイエットで考えてみると、現在の自分の体重を定期的に量る、理想の体重をいつも意識する、そうするとその時その時の状況で何をしたら良いかがわかり、最も適したことが実行できるのです。
「こんな体重になったらいいな」と思っているだけ、あるいは毎日体重を量るだけなど一方だけだと、具体的に体重を減らす行動には結びつかないでしょう。
やはり最適な行動をして望む結果を得るには、現実と理想の両方をしっかり意識することが必要です。
個人が自律的になれば、「自分らしく、活き活きと働けるようになる」可能性は高まりますが、やはり働く場所もとても重要です。
少なくとも社員として、自分の存在を認めてくれる組織、世の中に対して価値提供をすることを第一に考えている組織で働きたいですよね。
ただ、そのような会社はまだまだ多くはないのですが、そうした会社を世の中に増やしていく必要があります。
ではどうしたらそのような会社をつくっていくことができるのでしょうか?
ここでも「想い=企業理念」がポイントになります。
企業理念を軸に「チームづくり」を進め、そのチームワークを機能させるための土台となる「信頼関係づくり」に手間暇をかけるということです。
通常組織を運営しようと思ったら、制度やシステムで組織を機能させようとしますが、チームワークや信頼関係が無い組織に制度を入れても効果はほとんど無いというのが実感です。チームワークや信頼関係がある程度存在している組織に必要な制度を入れて初めて、組織に良い効果が生まれるのです。
特に日本の企業は、チームづくりや信頼関係づくりには意識を払っていないことがとても多いと感じています。そういったものは自然に醸成されるものと思っているケースが多いようですが、残念ながらチームワークや信頼関係は意識的に取り組まないと生まれません。特にビジネスの世界では。
「チームづくり」の主なプロセスは、
- 共通の目的(企業理念や組織目的)を明確にする
- 共通の目的(企業理念や組織目的)を全メンバーで共有する
- 共通の目的(企業理念や組織目的)を達成するための全社目標、部門目標、チーム目標などを設定する
- 誰がどのように目標達成行動を行って、どんな状況になっているのかをお互いに知る
- 必要に応じて協力し合う
ということになります。
そして「信頼関係づくり」のポイントは、リーダーが、メンバーが安心して挑戦できる風通しの良い組織風土を地道につくっていくということです。
具体的には
- 常にあいさつをはじめとする声かけをする
- 気軽に発言したり、相談できる雰囲気をつくる
- 相手が大切にしている想いや価値観を尊重する
- 意見やアイデアを受け入れ、実現に向けて対応する
- 情報をできる限りオープンにする
- 仕事の本来の目的や目指す姿を常に意識する
- 仕事の進め方ややり方はメンバーに任せる
- 最大限の価値提供を追求する
- 相手の自律性を保ちながら、必要な支援をする
- 失敗や成功などの経験から学ぶ
などをリーダーが地道に実践し続けることが大切です。
上記の他にも安心できる組織をつくるには、リーダーが自分の弱みを見せるということも重要なポイントです。
「チームづくり」や「信頼関係づくり」は、当事者のたゆまぬ働きかけが必要です。
チームワークがあり、信頼で結ばれた組織は、逆境にも強く、不況にも向かっていくことができます。
社員を最大限に活かし、社会に価値を提供し続けたいと考えている企業またはトップ皆さんは、ぜひ本質的な組織力強化に取り組んでいただきたいと思います。
それが社員を幸せにし、世の中を良くしていくことにつながるのですから。