社員は会社のために働いていない ~ エンゲージメントの素にフォーカスした組織づくり ~
※本記事は「社員が会社に貢献しなくてよい」という主張ではありません。社員が幸せを追求する結果として、最も高い貢献が生まれるという立場からの問題提起です。
目次
はじめに
最近経営者の方と話していると、「社員のエンゲージメントの高い、魅力的な会社にしたい!」という言葉をよく聞くようになりました。
社員のエンゲージメントが高い状態とは、社員が会社に愛着を感じ、積極的に貢献したいと思っている状態を指します。
社員が会社を愛してくれて、主体的に活き活きと働いてくれたら経営者としてはこんなにうれしいことはないですよね。
それに会社の業績にもいい影響があるはず。
ではなぜ、エンゲージメント向上を望んでいるのに、なかなか社員のエンゲージメントを高める取り組みがすすまないのでしょうか。
本記事では、社員のエンゲージメントは施策によって高めるのではなく、社員一人ひとりが幸せを追求できる環境を整えることの結果として生まれるものと捉え、その組織づくりの核心を掘り下げていきたいと思います。
エンゲージメントを高めるポイントは社員の幸福の後押し
社員のエンゲージメントが高まるポイントは、社員が会社や仕事をとおして幸せを実感できるように後押しをすることです。
「指示ゼロ経営」という上司が指示をしない自律型の経営を提唱しているコンサルタントで、ご自身も会社を経営し「指示ゼロ経営」を実践していた米澤晋也さんという方がいます。
その米澤さんが著書の中でこんなことをおっしゃっています。
「誰ひとり会社のために働いている人はいない。みんな自分の人生を豊かにするために、幸せな人生を送るために仕事をしている。」
経営者も含めて、だれも会社のためには働いていない、幸せになるために働いているんだということです。
だとすれば、社員の意欲を引き出し、エンゲージメントを高めるためには、社員が会社や仕事をとおして幸せを自ら追求できる環境を会社の中につくればよいということになります。
では社員は何が満たされたら幸せを感じることができるのか、次に人が幸せを感じる要因を見ていきたいと思います。
社員の幸せのもとは「やりがい」「よい人間関係」「成長」
多くの調査や当社が支援する会社の社員の皆さんの声を整理すると、人が仕事を通じて幸せを感じる条件は、驚くほどシンプルです。
- やりがい:自分の仕事が意味を持ち、役に立っている実感
- よい人間関係:信頼され、安心して関われる関係性
- 成長:昨日より少し前に進めているという感覚
エンゲージメントとは、この3つが日常的に満たされている状態から生まれてくると言えます。
当社の調査でも、一番多い答えは「やりがい」を得たいということです。
人間は、自分にとって意味あること(価値を感じること、うれしくなること、ワクワクすること、好きなこと、楽しいことなど)をしたいんですね。
そしてほぼ同じぐらいの割合で、「家族、友人、同僚とのよい関係、充実した関係」を結びたいと思っています。
「やりがい」「よい人間関係」と比べると「成長」と答える人は少ないのですが、「やりがい」「よい人間関係」を得るためにも、人間的・スキル的な「成長」が必要だと考えているようです。
㈱リクルートマネジメントソリューションズの「2024年新入社員意識調査」では、新入社員に「仕事をする上で大切にしていること」を聞いていて、下記がその上位の答えです。
- 社会人としてのルール・マナーを身につけること
- 仕事に必要なスキルや知識を身につけること
- 周囲(職場・顧客)との良好な関係を築くこと
- 任せられた仕事を確実に進めること
- 失敗を恐れずにどんどん挑戦すること
- 元気にいきいきと働き続けること
- 仕事で高い成果を出すこと
「人間関係」「成長」「やりがいまたは貢献」を重視していることがわかります。
新入社員はこれから社会に適応していこうという時期なので、「人間関係」「成長」へのウエートが高いですが、先に上げた本質的な3つの欲求「やりがい」「よい人間関係」「成長」とほぼ一致することがわかると思います。
エンゲージメントとは、特別な施策によって高めるものではなく、この3つの欲求が日常的に満たされ、社員の幸福度が自然に高まった結果として生まれるものなのです。
ここまでが、私たちが考える「組織づくりの基本的な構造」です。
ここからは、この考え方を、企業の中でどう形にしていくのかを整理します。
社員の「やりがい」「よい人間関係」「成長」を満たす組織づくり
私たちは、社員の幸福度を高めると同時に、お客様や社会に対してその会社独自の価値を提供できるようになることが重要だと考えています。
この社員の「幸せな働き方」とお客様や社会への「独自の価値提供」を同時に実現するためには、組織には次の4つの土台が必要だと考えています。
- 意味の共有(経営方針)
- 主体的な挑戦の仕組み(OKR)
- 安心できる人間関係(心理的安全性)
- 人を信じて任せるマネジメント(自律支援)
これらが揃ったとき、社員は「やりがい」「よい人間関係」「成長」を自然に実感し始め、幸福度を高めます。
ここで言う「社員の幸福」とは、楽をすることでも、守られるということでもありません。
社員が、自分の力で誰かの役に立ち、安心できる人間関係の中で、価値ある仕事に主体的に取り組み、成長を実感できている状態です。
社員に「やりがい」を実感してもらうためには、まず1で、事業を行う社会的意義や方向性を明確にし、それを社員と共有します。
次に2で、OKRという目標管理を通じて、社員がその経営方針の実現に主体的に取り組める体制をつくります。
これらを進めるためには、安心して意見を言いあえる「よい人間関係」が欠かせません。そのため3で、信頼と心理的安全性の高い組織づくりに取り組みます。
さらに、社員が主体性やチームワークを発揮し続けるためには、「成長」を実感できることが重要です。4では、管理職・マネジャーが社員の自律的な働き方を促すマネジメントを身につけていきます。
これら4つの組織基盤は、企業の状況に応じて順番を入れ替えたり、すでにある程度のレベルで実現できていることはその状態を活かすなど、無理なく取り組んでいくことが可能です。
丁寧に取り組んでいくことで、社員の幸福度やエンゲージメントが高まり、同時にお客様や社会への独自の価値提供が実現し、業績向上という好循環が生まれていきます。
そしてその好循環は、社員の定着や採用面でも、確かな効果をもたらします。
まとめ
本記事は、「短期的な成果」よりも、関わる人びとを大切にしながら、長く愛される会社をつくりたいと願う経営者のために書いています。
社員がエンゲージメント高く、主体的に活き活き働くようになるキモは、社員が会社や仕事をとおして幸せを追求でき、かつお客様や社会に自分たちらしい価値が提供できるような組織づくりをすることです。
これを当社では、「幸せな働き方」と「自分たちらしい価値提供」を同時に実現する4つの組織基盤づくりと呼んでいて、下記の4つの組織基盤づくりに取り組みます。
- 意味の共有(経営方針)
- 主体的な挑戦の仕組み(OKR)
- 安心できる人間関係(心理的安全性)
- 人を信じて任せるマネジメント(自律支援)
この4つの組織基盤づくりに丁寧に取り組むことができれば、社員は「やりがい」「よい人間関係」「成長」を実感し幸福度を高め、同時にお客様や社会への「自分たちらしい価値提供」が実現し、業績につながる好循環が生まれることになります。
人を信じ、関わる人びとの幸せと価値創造を同時に実現しようとする経営は、決して簡単ではありません。
それでもその道を選びたいと願う経営者と、私たちは一緒に考え、試行錯誤していきたいと思っています。
当社では、それぞれの企業の人材や組織に関わる課題解決の方向性を整理する個別相談を行っています。
こんな課題があるんだけど、何から手をつけたらよいかわからないというような場合は、一緒に課題を整理して最重要課題を見つけ、どのような解決策をどんな順番で取り組んだらよいかを見出すサービスです。
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