社員を最大限に活かして、目的を確実に実現する組織をつくる6つのポイント
目次
はじめに
企業には「理念」があります。
いわゆる企業理念ですが、企業が事業を展開していく上での最も基本的な考え方・哲学、経営者の心の底からの「~したい!」という想いや願いのことです。
「『おいしい』という笑顔と感動、そして心の豊かさに貢献したい」という想いの食品加工会社、「新しい価値を持つ美容品で、女性の自立を応援したい」という想いの化粧品メーカー、「すべての人に快適でクリーンな世界を提供したい」という想いの産業廃棄物処理会社。
これらは支援さていただいている企業の企業理念です。けっして大きな規模の会社ではありません。
言葉や文章になっていないとしても、すべての事業には「理念(~したい!)」があり、「理念(~したい!)」が事業に取り組んでいく上での原動力になっているはずです。
「理念(~したい!)」はどれも素晴らしいもので、世の中の会社のすべての「理念(~したい!)」が実現したら、どんなに素晴らしい世の中になるだろうと思います。
ただ「理念(~したい!)」を言葉や文章にし、掲げたからといって、「理念(~したい!)」の実現に向けて会社や社員が自然に、順調に動き出すかというと、残念ながらそんなことはありません。
「理念(~したい!)」という壮大な目的を実現するためには、社員に最大限の力を発揮してもらわないといけないのですが、実はなかなかそうは簡単にいきません。
経営者の皆さんなら実感されていることではないかと思います。
社員は企業理念のことなんかちっとも意識していない。社員は自分で考えて、行動することができない。社員同士仲が悪くて批判ばかりで、企業理念の実現なんて100年早いなどのグチを、経営者の皆さんからよく聞きますが、実はそうゆう状態をつくっているのはほとんどの場合、経営者なのです。
理念を起点に、今いる社員を最大限活かす取り組みをほとんどしていないからです。
それではどうしたら、「社員を最大限に活かし、目標(~したい!)を確実に達成する組織」をつくることができるのでしょうか。
今回は「社員を最大限に活かし、目標(~したい!)を確実に達成する組織」をつくる上での重要な6つの視点についてお伝えしたいと思います。
「社員を最大限に活かし、目標(~したい!)を確実に達成する組織」をつくる6つのポイント
まず、社員を最大限に活かすとはどうゆう状態のことをいうのでしょう。
簡単に言えば、社員の力が解放されている状態といえると思いますが、もう少し詳しく言うと、「社員がなるべく迷ったり、不安になったりすることなく、自分で考え、スムーズに人と協力しながら行動し、目指す結果を実現していける状態」といえると思います。
経営者は、社員がのびのびと力を発揮し、優れた結果を出せる仕組みをつくり、その仕組みを常に磨き上げていくことが求められます。
それではその仕組みをつくっていくにはどのようなことを、どのような順番で取り組んでいったらよいでしょうか?
社員を最大限に活かす仕組みづくりの内容と順番は下記のとおりです。
①理念・ビジョン
企業理念・ビジョン・行動指針・経営戦略など会社が何を目指しているのかを明確にし、「仕事をする意味」を示す
②わくわくする目標の設定
ビジョンや経営戦略を実現するために、全社、部門、チーム、個人がそれぞれの役割において、連携する形でわくわくする目標を設定し、「一体感」と「成長」を生み出す
③チームワーク
わくわくする目標を達成しようとする行動と協力で、「やりがい」と「プラスの相乗効果」を生み出す
④信頼関係
お互いに力を発揮し、協力するために「安心・安全な場」をつくる
⑤自 信
ワクワクする(挑戦的な)目標に向かっていくための自信をつける
⑥人事制度
全員が挑戦によって成長を促し、そのことによって生み出した貢献に報いる制度を整備する
社員を最大限に活かす仕組みづくりは、ほぼこの順番で取り組んでいきます。
まず理念やビジョンを整備し、その理念やビジョンを実現することにつながるワクワクする目標を全社、部門、チーム、個人が連携する形で設定し、全員がワクワクする目標達成のために行動・協力し、その行動や協力を促すために、信頼関係と自信を高め、社員の挑戦を促し、貢献に報いる制度を整備していくという流れです。
もちろんそれぞれが関係しあっているので、オバーラップしながら取り組みは進みますが、大まかにはこの順番です。
社員を挑戦的にしようと思って、人事制度の整備から入るケースが多いと思いますが、②わくわくする目標設定、③チームワーク、④信頼関係、⑤自信などの取り組みがある程度できていないとうまく機能しないので、人事制度を導入しても、研修をやっても何の変化も現れないということがよく起こります。
ですから、①の理念・ビジョンを起点に、②わくわくする目標設定、③チームワーク、そしてそのチームワークを支える④信頼関係、⑤自信をしっかりと作り込んでいくことがとても重要です。
そして一番大事なのは、③のチームワークをいかに磨いていけるかということです。チームワークが高まっていくことがイコール組織の成長・進化といってもよいと思います。
この①~⑥までの取り組みは、③のチームワークを生み出すための前提ともいえます。
もし一人ひとりの力が劣っていたとしても、チームワークを磨き上げていけば、理念やビジョンに近づいていくことができます。
一人ひとりが自分自身のわくわくする目標達成のために最大限の力を発揮し、同時に協力し合うことによってプラスの相乗効果を生み出していくというチームワークによって、組織のパフォーマンスは上がっていき、生産性が高まるので、社員一人ひとりが成長するとともに、利益率も高まり、会社も社員も豊かさを手にできるようになります。
「社員を最大限に活かし、目標(~したい!)を確実に達成する組織」をつくる6つのプロセス
それでは具体的に、①~⑥の6つのポイントへの取り組み方を見ていきましょう。
理念・ビジョンを掲げる
「社員を最大限に活かし、目標(~したい!)を確実に達成する組織」をつくるためには、まず会社が目指す方向である理念・ビジョンを掲げる必要があります。
もし会社に理念・ビジョンがまだ無ければ、経営トップの想いを言葉にすることから始めます。
経営トップが考える、「自分は世の中に対して、会社をとおして何をしたいのか?」「自分の会社は何のために存在しているのか?」「どんな世の中をつくることに貢献したいのか?」などを文章化します。
そして、その理念・ビジョンを実現するために、社員にどんな行動をして欲しいのかを表した「行動指針(Value)」をつくることもあります。
大事なことは、理念、ビジョン、行動指針の表現が、社員がスムーズに理解でき、その文章を読んで、自分は何をしたら良いかを自ら考えられるわかりやすい表現になっていることです。
もちろん、理念・ビジョン・行動指針は抽象的な考え方や姿勢であって構わないのですが、社員がその実現方法を自分なりに考えることができ、行動につながるよう、理解できなければ意味がありません。
中身は極端に言えば経営トップのこだわりを貫いて構わないのですが、表現にはぜひ社員への配慮をしてください。
抽象的でも、わかりやすく、社員が自分なりに工夫を加えながら行動に移れる表現ということになります。
わくわくする目標の設定
会社のビジョンを実現するために、ビジョンとそれに対する現状を見たときに、今年全社で何に取り組んでいきたいかを表した目標を決めます。
大事なのは、全員がわくわくする目標を設定することです。
わくわくする目標は、「こんな状態が実現できたら最高だな!」「会社がこんな風になったらうれしいな!」と思えるような「~したい!」という目的とその目的を達成するための絞り込まれた結果指標(数値目標)を3つ程度組み合わせて設定することがポイントです。
わくわくする目標 = 目的 + 3つ程度の重要な結果指標(数値目標)
いわゆるOKRの仕組みです。
人はこんな状態を実現したいという、抽象的あるいは定性的な目的がないとわくわくしません。
結果指標(数値目標)だけではやらされ感(「~しなければならない⤵」)という感覚が強くなり、モチベーションがなかなか上がりません。
ですから、今まで数値目標を中心に管理してきた目標管理制度が機能してこなかった理由がここにあると思います。
定性的な目的の達成のための結果指標(数値目標)であれば、やらされ感が出にくく、達成するのが当たり前のこととして取り組めるのです。
そして目的はわくわくする魅力的なものであるとともに、現在の自分たちの器の大きさを超えた挑戦的なものである必要があります。
そして、全社のわくわくする目標を達成するために、それぞれの部門が連携する形で部門のわくわくする目標を設定し、部門のわくわくする目標を達成するために、それぞれのチームが連携する形でわくわくする目標を設定し、チームのわくわくする目標を達成するために、それぞれのメンバーがわくわくする目標を設定するのがOKRです。
これで全員が一つの方向に向かって動き出すことになり、全社での「一体感」と挑戦することによる人と組織の「成長」が生み出されます。
チームワーク
チームワークを生み出していくためには、わくわくする目標達成のために、社員一人ひとりがその役割を自覚し、その役割を果たすために最大限の力を発揮する必要があります。
そして、社員一人ひとりが最大限の力を発揮するためには、会社が目指している方向やルール、自分の目標を常に意識する必要がありますし、知っておくべき情報をしっかり共有する必要がありますし、お互いの目標達成行動の状況を、お互いに良く知っていることが必要になります。
そのために、経営者と社員、部署間、チーム内、上司と部下、メンバー同士の間でのコミュニケーションを密にする必要があり、高い頻度でのミーティングや1on1での面談などがとても重要になってきます。
会社全体の目的や各部署の目的、それに関わるさまざまな情報やお互いの状況をよく知っていれば、必要な協力ができるようになります。
一人ひとりの最大限の力の発揮と協力によって、「やりがい」と「プラスの相乗効果」を生み出すことができます。
信頼関係
そして③のチームワークで重要な、一人ひとりが最大限の力を発揮することと協力し合う状況を生み出すためには、職場が「安心・安全な場」であることが重要です。
人は恐怖や不安が強いと委縮して、力を発揮できないばかりか、必要な協力をしようとしなくなります。
踏み込んだことをしない、余計なことをしないという「防衛モード」に入ってしまい、チームワークが生まれないので、組織や会社のパフォーマンスは上がりません。
ではどうやって、「安心・安全な場=信頼関係」をつくっていったらよいのでしょうか。
まず第一に、できるだけ会社や外部環境の情報を全員にオープンにするということです。メンバーは自分が判断できる材料が多ければ多いほど、安心します。
2番目には、お互いの存在を認めて、意見が率直に言い合える組織風土をつくることです。
3番目は、上司はメンバーの目標達成や問題解決に関して、いつでも支援する体制を整えることです。いざとなったら誰かが助けてくれる、特に上司が助けてくれるとわかれば、非常に安心感が高まります。
自信
わくわくする目標に挑戦することで、一体感ややりがい、成長を生み出すことができますが、わくわくする目標は自分たちの器を超える目標でもあります。
当然、わくわくする目標を設定すると不安や苛立ちなども出てきますが、それは健全なしるしです。
ただ不安が大きすぎるとほとんどの場合、わくわくする目標に挑んでいくことができません。
そこで、ある程度の自信、自分はできるんじゃないかという「自己効力感」が必要です。
そこでリーダーは、メンバーの不安が大きい場合は計画などしっかり準備をさせることが大切です。
また普段からメンバーに、知識や技術、専門性を高めさせておくことも大事です。
さらに、小さなことで構わないので、リーダーはメンバーが自分で決めたことを自力で達成するという成功体験を積ませてあげることが重要です。
そして、うまくできたことがあればその事実を褒めてあげ、うまくいかないことがあれば「あなたなら必ずできるはずだ」とメンバーの可能性を信じて励ましてあげることが重要です。
これらを丁寧に続けることで、メンバーの自信(自己効力感)が高まり、挑戦を楽しめるようになっていきます。
人事制度の整備
そして、①~⑤の内容を組織的にある程度実践できるようになったら、社員のさらなる挑戦を促すとともにチャレンジしたことによる会社に対する貢献をしっかり認めてあげる評価制度、賃金制度、より働きやすい労働条件を整備していくと良いと思います。
人事制度は仕組みで、外から内を良くしようというアプローチですが、ほかの条件が整わないのにこれをしようと思っても、なかなかうまくいきません。
ある程度チームワークや信頼関係などの組織の中身ができてきたところで、人事制度という仕組みで外からさらに促進していくというアプローチが効果的だと思います。
まとめ
この①から⑥をほぼこの順番でしっかりと取りくんでいくことで、社員を最大限に活かして、目的を確実に実現する組織をつくることができ、会社全体に好循環が生まれ、パフォーマンスが上がります。
特に大事なのは、チームワークですが、チームワークを高めていくためには、「理念・ビジョン」を掲げて共有し、そのビジョンを実現するための全社で連携したわくわくする目標設定が軸になります。
社員の「理念・ビジョン」の理解度を絶えず高めていくことと、わくわくする目標を全社、部門、チーム、メンバーで連動する形で設定するスキルを常に磨いていくことが組織の成長につながります。
「社員を最大限に活かし、目標(~したい)を確実に達成する組織」をつくろうとすることは、イコール組織の進化です。
社員が活き活きと働き、会社も成長し、皆が精神的にも経済的にも豊かになっていく組織づくりのトータルな取り組みです。
この6つのプロセスを確実に踏んでいけば、組織は必ず活性化します。
ぜひ楽しんで取り組んでみてください。