リーダーを育成することはできないのか?
先日、ある方と組織について話をしていたのですが、その方は海外の状況に詳しく、海外と比べると日本は非常にリーダーシップが弱いということをおっしゃっていました。
特に歴史のある一流企業の経営危機を見ても、経営者がよく確かめもせずに企業買収を行ったりしているので、あんなことになってしまっている。
ちょっと調べればわかることで、部下にまかせっきりの「よきにははからえ」というマネジメントが現実に行われていると思うが、海外では考えられない。
そして、リーダーは生まれつきの資質で、教育によってリーダーを育成することはできないのではないかとおっしゃっていました。
確かにカリスマ性のあるリーダーは資質が関係してくるかもしれませんが、求められるリーダー像も変わってきているので、私は「リーダーも育成できる」と考えています。
この記事では、リーダーを育成する方法について、お伝えしたいと思います。
リーダーとはどんな人か?
あなたはリーダーというとどんな人が思い浮かぶでしょうか?
戦国武将、明治維新の志士たち、インド独立の原動力になったガンジー、銃弾に倒れたケネディ大統領、ソフトバンクの孫さんなど。
確かにどの方も素晴らしいリーダーで、自分にはなれない気がしますよね。
小さな会社の社長であっても、自分が社員を引っ張っていくことなどできるのか?と思ってしまいます。
リーダーを考える際のポイントは、「人をリードする」ことが運命づけられていて、そのために「人に影響力を与えなければならない」というところだと思います。
リーダーは、人を動かしていかなければならないということですね。
人はそんなに簡単に言うことを聞いてくれるものではなので、人を動かすには魅力が必要ですし、魅力なんかない自分には無理だよと考えてしまいますよね。
ではリーダーの魅力はどこから来るのでしょうか?普通の人には持てないものなのでしょうか?
ある大学生の話
私が出会ったある人物の大学生時代の話です。
彼は、自分が立ち上げた野球サークルの代表をしていました。
ある時彼は、サークルにだんだんと活気が無くなってきていることに気がつきました。
練習に出てくる人数も思ったより少ないし、練習をやっていても何となく楽しさそうじゃないし、昔からムードメーカーで周りを元気にしたいと思っている彼にとっては見過ごせない状況でした。
そこで彼は思い立ち、メンバー一人一人とひざ詰めで話し始めました。
そして、それぞれからサークルに対して何を望んでいるのかを確かめていきました。
メンバー全員と対話してみてわかったことは、大きく分けると野球の大会に出て勝ちたいと思っているグループと楽しんで野球ができればいいやと考えているグループがあり、溝ができていたということでした。
そこで彼は、両方のグループのニーズを満たす練習を考えて実施しました。
また、メンバー間のコミュニケーションが図れるように、飲み会や合宿を企画して実行しました。
こうしたことをやっていくうちに練習に出てくるメンバーが徐々に増えて、サークルに活気が出てきました。
やはり活気のあるところには人が集まるもので、サークルのメンバーがどんどん増えていき、100名を超す大学でも最大規模のサークルになりました。
どうですか?
この話、魅力的に感じませんか?
サークルの代表と言っても、ただの学生ですから彼は権力やお金を使って人を動かすことはできません。
でも自分の違和感から思い立って行動し、サークルの景色を変えてしまいました。
別に彼は後に偉い人になったというわけではなく、今でも20代の若者だと思いますが、立派なリーダーですよね。
このことから、リーダーとはメンバーに仲間意識を持たせ、お互いに協力しながら共通の目的を達成する人ということができると思います。
この彼の中に、リーダーになるヒントがあると思います。
リーダーの要件
この大学生がサークルを立て直したプロセスを振り返ってみましょう。
まず、もともとムードメーカーで自分の周りの人たちが楽しい状態にしたいと思っていた彼は、サークルがそういう状態ではないということに気がつきます。
そして、なんでこんなことが起こっているのか知るために、メンバー全員と話したらいいんじゃないかと思い、行動します。
メンバー全員との対話で分かったメンバーのニーズに基づいて、練習メニューを変えたり、コミュニケーションを促進するイベントを企画したり、具体的な解決策を実行します。
そして、みんなが喜び、彼が望んでいた状態を実現しました。
このことから、リーダーの条件は次のようになると思います。
1.こんな状態を実現したいという「想い」を持っている
2.自分やメンバーを含む現実をよく理解しようとしている
3.自分の「想い」を大切にするのと同じように、メンバーの「想い」を尊重している
4.「こうしたらいいんじゃないか?」と思い浮かんだことを素直に行動に移している
ただ、これだけです。
謙虚で、自分やメンバーの想いに素直になろうとしているように見えます。
自分に素直に、自分らしく行動している人に対して、人は魅力を感じるのではないでしょうか?
決して難しいことではありません。
人は建前や打算で生きている人ではなく、どんなに小さなことであっても、自分はこれをやりたいと思ったことを素直にやっている人に惹かれますし、その人についていきたいと思うのではないでしょうか。
結局リーダーとは、自分の素直な「想い」から矢印を出して、前に進んでいる人です。
自分のドライブで生きていて、自分で自分をリードできる人です。
自分で自分をリードできる人は、自分以外の人もリードすることができるようになります。
つまり、リーダーを育成するということは、自分で自分をリードできる人を生み出していくことに他なりません。
自分で自分をリードできる人、自分らしく生きる人になることは、すべての人が望んでいることですし、すべての人が目指せることではないでしょうか?
自分で自分をリードできるようになる方法
それでは、自分で自分をリードできるようになるためにはどうしたらよいでしょうか。
順を追って、お話ししたいと思います。
①自分の「想い」を明確にする
やはり第一番目は、自分の「想い」を明らかにするということです。
先ほどの学生の場合は、「周りをいつも楽しい状態にしたい」ということを大事にしていました。
普段から自分自身と対話している人は、自然とこうした「想い」が強くなり、自分が生きていく上での軸になっていますが、多くの人はそこがあいまいになっています。
「想い」はまさに自分自身のリーダーのようなもので、それを明らかにし、言語化することは、人生が一変するほどのインパクトがあります。
人間に与えられた最大の資源を掘り起こすようなものです。
ではどうやったら自分の「想い」を掘り起こすことができるかですが、これは自分の心と対話し、自分自身に問いかけていくしかありません。
「私は今、本当は何をしたがっているのだろうか?」と問い続けることです。
頭で考えるのではなく、懐かしいような、うれしくなるような、とても納得感のある自分自身の「想い」とぜひ出会ってください。
②ありのままに理解しようとする
そして生きていく中で、自分自身、周りの人や関係する人、身の回りで起こることなどの現実を、自分の評価や判断を加えずに、ありのままに捉えるようにしてください。
対象に100%意識を向け、どんな気持ちなのか、どんな「想い」をもっているのか、どんな状況なのかなどをそのまま理解しようとして下さい。
さっきの学生さんの場合、「野球のサークルとはこうゆうものだ」という固定観念を持ってメンバーと対話していたら、二つのニーズのそれぞれのグループがあり、それがうまく調和していないということには気づけなかったかもしれません。
③すべてを活かそうとする
現実をありのままに理解した上で、わかったことをすべて活かすにはどうしたらよいかという発想をするようにしてください。
誰かの「希望」を切り捨てたり、無視したりということではなく、たとえばグループであればすべての人の「想い」を最大限叶えるにはどうしたらいいかということに挑戦し、発想してみてください。
④ひらめいたことを素直に実行する
そして、「こうしたらいいんじゃないか?」という確信をともなった発想が生まれてきたら、それを素直に実行してください。
もちろん誰かに相談したり、上司に承認を取る必要があるのであればその上で、行動するようにしてください。
⑤実行して気がついたことを次の発想に活かす
当り前ですが、「こうしたらいいんじゃないか?」と思って実行したことが、必ずしもうまくいくとは限りません。
失敗ということもあるでしょうが、必ず次へのヒントが得られるはずです。
それを次に活かして、望んでいる状態が実現するまでやり続けてください。
世の中で何かを成し遂げている人は、意識的または無意識的にこれをやっているのです。
まとめ
自分の「想い」からひらめいたことを、素直に実行していける人が、自分で自分をリードしていくことができます。
そして、それができる人はリーダーになることもできます。
あなたがリーダーになりたいかどうかはわかりませんが、自分で自分をリードすることを実践していれば、いつでもリーダーになれる準備ができているということになります。
多くのリーダーが必要ですね。