経営者のもっとも大きな2つの役割
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経営者のもっとも大きな2つの役割
「経営者のもっとも大きな役割は何だと思いますか」と問われたら、あなたは何と答えるでしょうか?
この記事を読んでいただいている皆さんは、経営者の方や経営を支えている方が多いのではないかと思いますが、このテーマを考えてみることは非常に大きな意味があると思います。
経営者のもっとも大きな役割は、「決断すること」「収益を上げること」「会社が進む方向を示すこと」「会社を存続させること」「社員に給料を支払うこと」「ライバル企業を打ち負かすこと」「社員の成長を促すこと」などが思い浮かぶかもしれませんが、どれも大変重要なことだと思います。
私たちは、上記に上げたことも踏まえて、経営者には2つの大きな役割があると考え、下記のように表現しています。
① 世の中から本当に求められる独自性の高い価値(製品やサービス)を生み出し、提供し続けること
② そのために、社員(メンバー)一人ひとりを最大限に活かすこと
企業は、世の中から本当に求められる、その企業独自の製品やサービスを生み出し、提供していかなければそもそも存在する意味がありませんし、長く存続し発展していくことはできません。
また、その企業独自の製品やサービスを生み出し、提供し続けるためには、その企業に所属するすべての社員の智恵や能力を最大限に活用しなければなりません。
これは、個人で仕事をしている場合も同じです。
自分自身の智恵や技術を最大限に活かし、他とは少し違った製品やサービスを提供できなければ、厳しい環境の中では生き残っていくことはできないでしょう。
さて、皆さんの会社では、世の中から本当に求められる独自性の高い価値(製品やサービス)を生み出し、提供し続けようと常に意識しているでしょうか?
またそのために、今いる社員(メンバー)を最大限に活かそうとしているでしょうか?
言い換えると、社員(メンバー)一人ひとりを人として大切にし、最大限に活かし、社会に貢献し続けようとすることを経営の中心に置いているかということです。
私たちは、人間性を尊重しながら、独自性の高い価値の創造を続ける企業がもっとも逆境に強く、発展していく可能性が高いと考えています。
それでは、上記の経営者のもっとも大きな2つの役割を果たすにはどうしたらよいかについて、順番に見ていきたいと思います。
「世の中から本当に求められる独自性の高い価値を生み出し、提供し続ける」にはどうしたらよいのか?
「世の中から本当に求められる独自性の高い価値を生み出し、提供し続ける」ためには、自分たちの会社は何のためにこの世に存在しているのかを徹底的に考え、自分たちの中にその答えを見つけることが必要です。
いわゆる経営理念といわれるミッション・ビジョン・バリューのミッション(存在理由・存在意義)に当たるもので、会社を経営していく上でほぼ変わることのない最も重要な価値観です。
ちなみに、弊社のミッション(存在理由・存在意義)は
『一人ひとりを最大限に活かし、すべての力を一点に集中する組織づくり』
です。
今回の記事でお伝えしたいことのエッセンスそのものです。
これが、弊社がこの世の中に存在する意味であり、このことを実現するためにすべてのサービスを行っています。
世の中の流れをとらえ、人々のニーズに合わせた価値(製品やサービス)を提供しようとすることはとても大事なことです。
ただ、それだけでは世の中から本当に求められる独自性の高い価値を生み出し、提供し続けることはできません。
世の中の流れや人々のニーズをありのままにとらえると同時に、ミッションを大切にしながら発想したときにはじめて、世の中から本当に求められるその会社独自の価値を生み出し、提供し続けることができるようになります。
なぜなら、ミッションはその会社独自のものだからです。
ですから、ミッションを大切にして、それを追求した経営を徹底すればするほど、ユニークでかつ世の中から本当に求められる価値を提供していくことができるようになります。
神奈川の建設会社で弊社が支援させていただいている会社がありますが、ミッション・ビジョン・バリューをとても大切にしています。
その会社のサービスを提供する上での重要な価値観は、「楽と安心」をお客様にお届けすることです。
この価値観にもとづいてお客様に「楽と安心」をお届けするために、お客様に対して工事の途中経過を写真とともに定期的にメールし、また工事を完了したら完了報告を書面で行っています。
決して難しいことではありませんし、やろうと思えばどの会社でもできるはずですが、こういう丁寧な途中経過と完了の報告を行っている同業他社はほとんどないので、今や神奈川県内でもトップクラスの売り上げと利益率を誇る会社になりつつあります。
上記のようなほかの会社が行っていないサービスを愚直に続けられるのも、ミッション・ビジョン・バリューの中に「楽と安心」という価値観があるからです。
自分たちが大切にしているミッションを徹底的に追求すれば、おのずと差別化ができてしまい、世の中にそれが評価されて発展していくことになります。
ですから、世の中から本当に求められる独自性の高い価値を生み出し、提供し続けるためには、ミッションを明確にし、それを徹底的に大切にして発想していくことが不可欠であることがわかると思います。
最近、パーパス経営が注目されていますが、ミッションや経営理念を大切にし、自分たちは何のために事業をするのかを考えながら経営をすることが、まさにパーパス経営と言えます。
目的から始め、目的をいつも意識して発想し、事業を行っていくということですね。
「社員(メンバー)一人ひとりを最大限に活かす」にはどうしたらよいのか?
経営者の2つ目の最も重要な役割「社員(メンバー)一人ひとりを最大限に活かす」には、どうしたらよいでしょうか?
世の中から本当に求められる独自性の高い価値を生み出し、提供し続けるためには、会社の中のすべてのリソースを総動員する必要があります。
そのリソースの中でももっとも重要なリソースは人=社員です。
この社員を最大限に活かすことは、経営者のもっとも重要な役割ですが、意外にそういう発想から経営を行っている会社は多くないのではないかと思います。
世の中に独自性の高い製品やサービスを提供することは意識していても、そのために今いる社員一人ひとりを最大限に活かそうというふうにはなかなか思い至らないかもしれません。
どんなに優秀な経営者やリーダーであっても、世の中から本当に求められる価値を発想し続けることはできないでしょう。
やはりお客様と直接接している社員の智恵や感覚が重要ですし、生み出した価値をお客様に提供するのもほとんどは社員です。
社員一人ひとりが最大限の力を発揮してくれないと、事業は思ったように展開できないはずです。
それでは、どうしたら社員一人ひとりが自発的に最大限の力を発揮することができるようになるのでしょうか。
そのポイントは3つあります。
①経営理念を含む経営方針を明確にし、一人ひとりの役割を明確にすること
②安心できる組織文化をつくること
③メンバーが自律的に働けるようにマネジメントすること
要するに、社員一人ひとりが迷わず、安心して、自分の判断で動ける、自ら進んで発想し、行動できる環境を作ってあげるということです。
経営理念を含む経営方針を明確にし、一人ひとりの役割を明確にすること
まず社員が迷わないためには、ミッション・ビジョン・バリューなどの基本的な価値観を明確にし、それを実現するための経営戦略を立案し、その経営戦略を実行するための全社・各部・各個人の目標を一貫性のある形で設定することです。
そうすれば、各個人が自分の役割を自覚し、自分が目標を達成すれば部の目標の達成につながり、部の目標が達成されれば全社の目標の達成につながり、全社の目標が達成されれば、経営戦略が実行されたことになり、経営戦略が実行されれば自分たちが最終的に目指しているミッションやビジョンを実現することにつながり、世の中に対して良い影響を与えることができることを認識することができようになるので、自分の仕事に大きな意味を感じることができるようになり、社員が自発的に発想し、行動するようになる大きな原動力になります。
ただ個人の役割が明確になり、その役割に意味があるとわかっても、安心できない組織の状態だと、人は委縮してしまい、十分に力を発揮することはできません。
ですから、②の安心できる組織文化をつくることがとても重要です。
安心できる組織文化をつくること
安心できる組織文化とは分かりやすく言うと、信頼し合える人間関係を生み出す考え方や行動ができる組織をつくることです。
この安心できる組織文化をつくるために最も重要なことは、経営者やリーダーが社員(メンバー)一人ひとりを人として価値ある存在であるということを無条件に認めることです。
ちょっと突飛に聞こえるでしょうか?
人は誰しも、「世の中に少しでも良い影響を与えることができる価値ある存在でありたい」という根源的な願い(欲求)を持っているとても尊い存在です。そのことをまずすべての社員の中に認めるということです。
人は人として自分の存在を認められるととても安心します。逆に人は人として自分の存在を認められないと極めて不安になります。不安になると自分を守ることに精一杯になり、外に向かって力を発揮することができなくなるのです。
きずなで結ばれた家族のように、無条件にお互いの存在を認め合うように、ビジネスの世界でも安心できる組織風土をつくるためには、社員をまず人としてその存在を無条件に認めてあげることが重要です。
ことビジネスになると人間性など考えてはいけないのではないか、非情にならなければならないのではないかと考えがちですが、そんなことはありません。他の条件とも組み合わせる必要がありますが、人を人として大切にする組織が、当たり前ですが最終的には一番発展するのです。
安心して暮らせる社会福祉を充実させ、一人ひとりの存在を尊重する北欧諸国の政策がうまくいっていて、国民の幸福度が高いことからもわかると思います。
安心は、人が外に向かって力を発揮するためにもっとも重要な土台を言ってもよいかもしれません。
グーグルがものすごいエネルギーを使って、心理的安全性をチームの中に生み出そうとしていることからもわかると思います。
メンバーが自律的に働けるようにマネジメントすること
そして、社員(メンバー)一人ひとりを最大限に活かすために必要な3つ目のことは、リーダーがメンバーが自律的に働けるようなマネジメントを実現することです。
そのマネジメントの中で一番重要なことをお伝えすると、リーダーはメンバーと仕事の目的とゴールを確認しあったら、その仕事のやり方はメンバーに任せ、小さくても良いので成功体験を積ませてあげるということです。
そうすると、メンバーは自分で考えて工夫したことでうまくいく経験を積み重ねていくので、成長につながりますし、自分に対する自信にもつながっていきます。
自分の中に成長実感と自信が生まれれば、「自分はできる」という自己効力感が生まれ、自分が持てる最大限の力を発揮することができるようになります。
このメンバーの成長を促し、自信を持たせるのがリーダーのもっとも大きな役割であると言えますが、メンバーが自ら進んで最大限の力を発揮してもらうためには、メンバーが大局的な判断ができるように経営者に近い情報をできるだけ提供することと、失敗を責めず、次に活かすような指導もとても重要です。
まとめ
経営者のもっとも大きな役割の1つ目は、「世の中から本当に求められる独自性の高い価値(製品・サービス)を生み出し、提供し続ける」ことです。
そして、そのために「社員(メンバー)一人ひとりを最大限に活かす」ことが、経営者の最も大きな2つ目の役割です。
上記の2つを実現できれば、企業は発展し、永続していくことができます。
上記のような会社であれば、理念に共感してどんどん優秀な人材が集まってくるようになりますからね。
すばらしい好循環が生まれるようになるのです。
そして、そのような好循環が生まれる会社になるためのポイントは3つです。
①経営理念を含む経営方針を明確にし、一人ひとりの役割を明確にすること
②安心できる組織文化をつくること
③メンバーが自律的に働けるようにマネジメントすること
決して簡単なことではありませんが、極めて難易度が高いかというとそれほどでもありません。
ポイントは、社員(メンバー)を人間としてその存在を認めること、会社の方針を明確にしてしっかりと全員が理解できるようにすること、そして目的とゴールを確認しあったら仕事のやり方は社員(メンバー)に任せることです。
丁寧に取り組んでいけば決して難しいことではなく、個の幸せな働き方と組織の発展を同時に実現できる理想的な経営を生み出すことができます。